No.40 2021年新年号

アフターコロナで進む個人の時代

 昨年からの新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、弊社でもZOOM等を使ったオンライン会議を手探りで始めましたが、1年近くたった今、当たり前のようにオンラインを活用して仕事をするようになりました。初めは必要に迫られてではありましたが、やってみると意外に便利で効率がいいことがわかり、コロナが終息したとしても、リアルとオンラインは併用されていくのではないでしょうか。

 内閣官房日本経済再生総合事務局が発表している「ウィズコロナ、ポストコロナの働き方の方向性」の中で、会社員へのアンケートで「アフターコロナの世の中では、働き方はどのような方向に進むと思いますか」という問いに対して、81.6%の人が「時間・空間の制約からの解放」、60.7%が「企業内外を自在に移動する働き方の参加」と答えています。

 日本独自の雇用慣行として「労働時間」で管理されていた労務管理のやり方は見直しを迫られるでしょう。ウィズコロナ・アフターコロナでは、時間ではなく成果を求められるようになり、兼業・副業も一般化するかもしれません。

 個人と企業がお互いに選びあう関係が構築されていけば、おのずと働き方も変わります。その中でいかに成果を出していくかということになると、当然それぞれの個人の力(キャリア)が問われてきます。日本でも、正規・非正規にかかわらず「同一労働同一賃金」が進められていますが、国際社会ではすでに共通原則になっています。             

 今後、日本では労働人口不足が予測され、働く女性、働くシニアを増やし、さらに生産性を上げることは喫緊の課題です。業務範囲を明確にして、評価システムの見直しが進めば、このコロナ禍を機に、これまで言われていた「働き方改革」は一層進むのではないでしょうか。

 歴史を振り返ると、世の中の主役は大きな出来事を機に入れ替わっていることに気づかされます。明治維新によって、武士の世の中が終わり、明治天皇を頂点とした「国」が主役の時代になります。しかし、第二次世界大戦の敗戦から高度経済成長を成し遂げたのは、国ではなく日本のすばらしい多くの企業でした。大きな安定した企業の傘下にいることで「安心・安全な人生」を送ることができた時代です。しかし、バブルが崩壊し、失われた 年とその後の経済の低成長を経て大企業でも倒産する時代となり、企業に頼っていれば安心の時代ではなくなりました。一つの企業にずっと所属しフルタイムで働く時代は終わり、複数の仕事に携わることが可能になるかもしれません。おそらく、これから世の中で主役になりえるのは、実力を身につけた私たちひとりひとり「個人」ではないでしょうか。

 将来が見通せない不確実な世の中においては、自分自身のキャリアも「資産」ととらえ、リスク分散する必要があるかもしれません。人生設計の中でそのキャリアをいつどのように形成していくのか、「自分を主役とした人生を自分自身で作る」プランが求められるでしょう。そういう時代がもう来ているのを感じます。(加藤 惠子)



~確定申告に向けて~
医療費控除と住宅ローン控除

医療費控除編

 医療費控除とは、1月から12月末までの1年間に支払った医療費の合計が一定の金額を超えたら、医療費控除の確定申告をすることで、「所得控除」を受けることができる制度で、会社員でも医療費控除は確定申告が必要です。

 医療費控除が受けられるのは、1年間の医療費の自己負担額から、高額療養費や民間保険の保険金として戻ってきた金額を除いて、10万円(所得が200万円以下の人は所得の5%)を超えた場合です。

 そして、医療費は、生計を一にしている家族分も合算することが可能となっていますので、所得の多い人が申告すると良いでしょう。

 又、新しく導入された「セルフメディケーション税制」は特定の医薬品を購入した場合に条件を満たすと医療費控除として使える制度ですが、従来の医療費控除と同時に行うことはできません。

*セルフメディケーション税制とは:

 特定の成分を含むOTC医薬品を1年間に12,000円以上購入し、更にその年に会社の健康診断や自治体のメタボ検診などを受けていること

医療費控除の対象になる医療費・対象にならない医療費の例

 対象になるもの対象にならないもの
通院・入院・医療機関に支払った治療費 ・治療を目的としたマッサージ師、鍼灸師などの施術費用 ・通院や入院のための交通費 ・レーシック手術    ・治療に直接関係のないマッサージ師などによる施術費用 ・通院のための自家用車のガソリン代 ・通常のメガネやコンタクトレンズの購入費用
医薬品・治療や療養に必要な医薬品の費用(かぜ薬など)


・病気予防や健康増進、美容目的で購入したサプリメント費用

 医療費控除は5年前までさかのぼって申告できますので、手間はかかりますが(2017年から領収書の添付は不要)忘れていた人は、税金の還付を受けましょう。(渡辺 一江)



住宅ローン控除編

 住宅ローン控除とは、返済期間10年以上の住宅ローンを利用して住宅の新築・取得又は増改築等をした場合、10年間、各年末の住宅ローン残高の一定割合(1%)を所得税額(一部、翌年の住民税額*)から控除する制度です(*前年分の所得税から控除しきれない場合、翌年度の住民税から控除)。

 主な要件は以下の通りです。

  • その人が主として居住用にする住宅であること。
  • 新築・取得・増改築後6か月以内に入居し、控除を受ける年の12月31日までに引き続き居住していること。
  • 合計所得金額が3000万円以下(給与収入だけの場合は3195万円以下)であること。
  • 床面積50㎡以上であること。
  • 償還期間が10年以上のローンであること。

以上の要件を満たすと、以下のような控除が受けられます。

一般住宅

入居時期借入限度額控除率控除期間最大控除額住民税からの控除上限額
2013~2014.32000万円1.0%10年間200万円9.75万円/年
2014.4~2021.124000万円1.0%(☆)10年間400万円13.65万円/年

認定長期優良住宅・認定低炭素住宅

入居時期借入限度額控除率控除期間最大控除額住民税からの控除上限額
2013~2014.33000万円1.0%10年間300万円9.75万円/年
2014.4~2021.125000万円1.0%(☆)10年間500万円13.65万円/年

☆消費税率10%が適用された住宅を取得し、2019.10.1~2020.12.31までの間に居住した場合は、控除期間が13年間となります。11年目から13年目までの各年の控除限度額は以下のいずれか小さい額となります。

①借入年末残高の1%

②建物購入価格の3分の2%

(建物購入価格の限度額は一般住宅の場合4000万円、認定住宅の場合5000万円、増改築等の場合は増改築にかかった費用の額)

 但し、ご注意いただきたいのは中古住宅の場合です。この減税制度は消費税が8%または10%の場合に適用されます。一般の住宅の個人間(媒介)の中古住宅売買(消費税が非課税)の場合はそれぞれの表の上段が適用されます。

 また、この適用を受けるためには確定申告をする必要があります(給与所得者の場合、翌年以降は年末調整で控除を受けることが可能です)ので、こちらも併せてご注意下さい。(永津 直弘)

編集後記(2021新年)

 先日、長期出張を終えた知人が帰宅すると、家の表札がなくなっていたそうです。「盗まれた!」とまず思ったそうですが、郵便箱からたまった郵便物を取り出すと、その中になくなっていた表札がメモと一緒に入っていたとのこと。落ちていた表札を通りがかりの人が見つけて入れておいてくれたのでしょう。思わず心が温かくなり、一瞬でも誰かを疑ってしまったことを後悔したそうです。

 日本では、落としたお財布や定期券がそのまま持ち主に戻ることはよくあります。日本はそういう国だと思います。

 人と人とが距離をとらなければならない今ですが、気持ちはしっかりつながっていたいですね。

 なかなかお会いできないので、「オンラインセミナー&相談会」を行ないます。ご質問もお受けします。お時間があえば是非ご自宅からでもご参加ください。詳細はQRコードからご確認ください。(加藤 惠子)