No.45 2022年夏号

スタートした金融教育


 この4月から、学習指導要領の改訂に基づいた高校生に対する金融教育が始まっています。
 文部科学省が出している高等学校学習指導要領解説を見ますと、「家計の構造や生活における経済と社会との関わり、家計管理について理解すること」とあります。具体的には、「生涯を見通した経済計画を立てるには、教育資金、住宅取得、老後の備えの他にも、事故や病気、失業などのリスクへの対応が必要であることを取り上げ、預貯金、民間保険、株式、債券、投資信託等の基本的な金融商品の特徴(メリット・デメリット)、資産形成の視点にも触れるようにする。」と明記されています。
 金融広報中央委員会が18歳~79歳の25,000人を対象に行なって公表している「金融リテラシー調査2019」によると、学校における金融教育を「行うべき」との意見は67.2%ですが、実際に受けたとの認識がある人はそのうち8.5%でした。
 OECDによる米国との比較調査で興味深い数字がありました。「金融知識に自信がある人」の割合が、米国72%に対して日本は12%と圧倒的に低いのですが、「緊急時の金銭的な備えがある人」の割合では、米国46%に対して、日本は54%と上回っています。「借り過ぎと感じている人」の割合も、米国は40%ですが、日本は13%です。知識では負けても、堅実性では勝っていると言えます。

 高校生の段階で何故きちんとした金融教育が必要か。それは、成年年齢が18歳に引き下げられたためということもありますが、これからの世の中を生きるためには、お金を「使う」「貯める」「殖やす」「備える」「借りる」知識が必須だからです。

 慶應義塾を創設した福澤諭吉は、「福翁百話」という処世訓話の中で、「人生における真の独立とは、この世に生まれて、父母に養ってもらい、身分相応の教育を受けたのち、死に至るまで自活する覚悟をもって生きることである。従って、教育は子の独立につながるように行われるべきである。」そして、「独立心を養わせるには、実学を身につけさせることが重要である。」と説いています。その「実学」とは、「自ら労して自ら食らう生活者としての学」であり、学問と生活とがいかに結びつくかが重要であるとしています。

 金融知識は難しくてよくわからないと言われますが、「わかろうと努力してもわからない」のか、「努力せずに難しそうだからわからないと思う」のかでは違うのではないでしょうか。
 これからの社会で、「よりよく生きていくために必要な金融教育」をしないという選択肢はもはやないでしょう。(加藤惠子)

 

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永津直弘・渡辺一江

編集後記

  現在、日本人の死因順位1位はがんですが、このがんが1位になったのは1981年で、以来ずっと変わっていません。令和3年は全死亡者数に占める割合は26.5%でした。
 第2位は心疾患で、14.9%です。
 そして2018年からは老衰が第3位に上がり、以降急増し、昨年は10.6%になりました。現在、約10人に1人が老衰で亡くなっていることになります。
 厚生労働省の死亡診断書記入マニュアルでは、死因としての「老衰」は「高齢者で他に記載すべき死亡の原因がない、いわゆる自然死の場合のみ」となっています。自然死とは、「医学的な処置を行わずに迎える死」とも言われ、病院での死亡診断書に記載されるケースは少ないのではないでしょうか。それでも「老衰死」が増えているということは、一つは死亡する場所が病院以外の自宅や高齢者施設などに移ってきているのではないかと思います。
 病気というものは、何らかの理由で体が故障した状態であって、その故障を治す所が病院です。でも、「老衰」は故障ではなく「寿命」なのだそうです。無理に引き延ばす延命治療をせず、自然に任せるという選択肢が広がっているのかもしれません。

(加藤 惠子)