No.43 2022年新年号

高齢化社会における働き方プラン

 サントリーのN社長が「45歳定年制」を言って世間の話題になりました。また、家電量販店のノジマは80歳までとした臨時従業員の雇用上限を廃止しました。求められればいくつになっても働けるということです。この両者のニュースは一見、違った話のように聞こえますが、実は同じことを言っているのではないでしょうか?つまり、長く働くためにはセカンドキャリアあるいはパラレルキャリアが必要と言っているように思えます。
 「人生100年時代」という表現が日本で使われるようになって5年以上経ちます。「人生 年時代」の考え方とはもう違ってきているのです。老後は60歳以降ではなく、80歳以降の時代となったのです。「人生100年時代」のライフステージでは、20~80歳までの仕事ステージを複数に分けていろいろな経験をしていく。同じ会社で違う分野を経験したり、他社に移るということもあるかもしれません。またはフリーランスになるとか起業するということもあるかもしれません。 歳まで同じ職場に依存していると、セカンドキャリアやパラレルキャリアの道を閉ざすことになってしまう。そこをN社長は言っているのかもしれません。
 先日、日本FP協会が主催する「FPフェア」で「人生100年時代のキャリア自律とは」というテーマで、慶應大学大学院の特任教授である高橋俊介氏のお話を拝聴する機会がありました。そこで色々な話を伺いましたが、特に印象に残った内容は以下のようなものです。
 ゴールを60歳としたキャリア形成を考えたところで、5年・10年先はわからない。10年後にある仕事の50%は今ない仕事。今ある仕事は10年後には50%ない仕事。想定外が起きる社会になっている。勤めている会社が倒産してしまうかもしれないし、部署が丸ごと他社に吸収されるかもしれない。その社会に対応するためには専門性を2~3つぐらい持つこと。そして、自分らしさの基本である「内的動機」(心の利き手)を知ること。「内的動機」とは例えば達成動機が強い人は高い目標を持つとか、感謝欲の強い人は顧客への奉仕する部門が向いているなどです。心の利き手を使って仕事をするとストレスを感じにくいということでした。
 内的動機は少し難しい話でしたが、自分の内的動機を知ることが、現在のキャリア形成においてもあるいはセカンドキャリアにおいても重要だということでしょう。
 想定よりも長く生きてしまう高齢社会にとって、60歳以降も働き続けるということは日本経済を回していくことや日本の社会保障を支えるということ、本人の社会貢献や生きがいという意味でも重要になってきています。いつか来る人生の第3コーナー・第4コーナーを、若い頃から考えておかないといけない時代がやってきたということでしょう。(永津直弘)

 

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渡辺一江・加藤惠子

編集後記

 

 総務省統計局が発表した昨年10月1日の我が国の人口推計によると、総人口は1億2512万人で、前年同月に比べて59万人減少しました。総人口が減っていく中で、65歳以上の高齢者の人口は23万8千人増えています。高齢化率29.1%は世界1位ですが、2位のイタリアが23.6%ですからダントツ1位ということになります。さらに、増えている数字があります。昨年の国勢調査による世帯数です。2015年に行なわれた前回の国勢調査から4.2%増えました。
 世帯数が増えるということは世帯の人数が減るということです。かつては「夫婦と子供から成る世帯」が一番多かったのですが、今は単独世帯がトップで、さらにその3分の1は65歳以上の世帯です。夫婦世帯であっても、どちらかが先に亡くなればその後は1人暮らしになります。
 「高齢期の住まい」「終の住まい」を真剣に考える時、「成り行きに任せる」「家族に任せる」という選択肢もありますが、選択肢が狭まってからの選択と、選択肢が広いうちの選択では、又、自分の意思で決めるのか、家族が決めた選択に従うのかでは大きく違うのではないでしょうか。

(加藤 惠子)