No.41 2021年春号

サイバーリスクに備える

 新型コロナウイルスの影響で急速に広がったテレワークやWEB会議ですが、インターネット環境やパソコンの端末があれば、いつでもどこでも業務や会議が行える便利さがあり、今後コロナが収束したとしても活用されていくのではないかと思います。しかし一方、セキュリティ対策の脆弱性によって起こる情報漏洩などの危険性もあり、サイバー・情報漏洩リスクが身近な問題となっています。テレワークに関して言えば、企業内のネットワークでは守られている攻撃リスクも、社員の自宅環境では暗号化などのセキュリティ対策が不十分なケースが多く、そこを標的とされる事故が増えているのです。想定される事故例としては、在宅勤務中に従業員のパソコンがウイルスに感染し、顧客情報が漏洩してしまった、WEB会議中に第三者が不正アクセスによって侵入して大切な情報が盗まれてしまったなどがあげられます。

 ひとたびサイバー・情報漏洩事故が起きて法律上の損害賠償責任が発生してしまうと、原因調査費用や被害者に対する賠償金やお見舞金、データ復旧費用など多額の損害が発生します。自動車事故と同じ位の発生率と言われるサイバー・情報漏洩事故ですが、日本損害保険協会が中小企業経営者に対して行った調査によると、そのために何らかの備えをしている企業はわずか1.6%であり、まだまだ対策が後回しになっている感が否めません。

 テレワークやWEB会議はしない家庭内であっても、安心はできません。私たちが日常利用するパソコンやタブレット、スマートフォンも同じ危険にさらされています。サイバー攻撃のターゲットは、以前は大企業が中心でしたが、最近は中小企業や個人を狙った攻撃も増えているのです。OS、無線ルータ、セキュリティソフトなどは常に最新バージョンに更新しておく必要があります。古いままにしておくと、セキュリティに弱点がある状態のままとなり、その脆弱性を悪用されやすくなります。アップデートを怠らないことと、もしもの時に備えて、大切なデータはバックアップしておくことが大切です。
 又、日々届くメールの中には、ウイルスが組み込まれたファイルが添付されていることも多いのではないでしょうか。怪しいと思ったファイルは絶対に開かないこと、ウイルスを仕掛けたサイトなどへ誘導するURLが記載されているメールが来た時には、これらのURLを安易にクリックすることはできるだけ避けるべきです。

 頻度は少なくても被害が大きくなってしまうリスクに対しては、保険商品を上手に活用する対策も有効です。インターネット上の詐欺やサイバー攻撃のテクニックは、ますます巧妙に、日々多様化しています。リスクをゼロにすることはできませんが、被害を最小限にすることは可能です。備えはしっかりしておくべきでしょう。(加藤 惠子)

働けなくなった時の保障(補償)と備え

公的保障制度

 公的な保障としてはおおよそ以下の保障制度が考えられます。

①傷病手当金(健康保険)
 会社員の方が業務外での病気やケガで働けなくなった時に、休業4
日目から最長 か月間、給与の2/3程度が支給される健康保険制度の保障です(国民健康保険の方は対象外です)。

②障害基礎年金・障害厚生年金(公的年金)
 病気やケガで重い障害を負った時に給付を受けられる国の制度(公的年金)です。国民年金に加入され
ている場合は障害基礎年金、厚生年金に加入されている場合は障害基礎年金に加えて障害厚生年金を受
け取ることが出来ます。

 また、支給には以下の条件が必要です。
・初診日において 歳未満であること
・障害認定基準を上回る障害状態であること
・保険料を一定期間以上未納にしていないこと

  自営業の方 会社員の方
障害基礎年金(1,2級)
障害厚生年金(1,2,3級) ×

③休業補償給付・休業給付(労災保険)
 業務上のケガなどが原因で休業した場合、労災保険によって補償される制度です(基本的に自営業者は対象外です)。休業4日目から給与の8割程度が給付されます。再び働けるまで受け取ることが可能です(日数制限なし)。また、傷病手当金との同時利用は出来ませんのでご注意下さい。

④障害(補償)年金・障害(補償)一時金(労災保険)
 業務上のケガなどが治癒した後に障害が残った場合に労災保険から支給される補償です(基本的に自営業者は対象外です)。障害1級から7級
までは障害の程度によって一時金と障害(補償)年金が支払われ、障害8級から 級までは障害(補償)一時金が障害の程度によって支払われます。

⑤高額療養費制度
病気やケガによる治療が高額になると、医療費(健康保険診療)の1か月分の自己負担限度額が年齢や所得によって一定以上払わなくてよい
という制度です。上限額は1人当たりではなく、同一世帯で合算が可能です。また、会社員・自営業者問わず利用できます。
(永津直弘)

民間の備え(就業不能保険・所得補償保険)

 病気やケガなどが原因で働けない期間が長引くと、治療費などの支出の増加と収入の減少で家計への影響が大きくなります。病気やケガが原因で働けなくなった際の収入減少に備えるための民間保険として、生命保険会社が扱う「就業不能保険」と損害保険会社が扱う「所得補償保険」があります。

 「就業不能保険」は、所定の就業不能状態になると、一般的に、給与のように毎月保険金を受け取ることができます。保険期間は、60歳、65歳など希望する年齢を指定でき、保険金額は年収に応じて設定します。就業不能の条件は商品によって異なるので、どんな場合に受け取ることができるのかを事前に確認することが大切です。60日以上就労困難状態に該当していれば、61日目から給付の対象になる商品もあります。
 精神疾患の場合は、対象外か特約を付けることで保障される商品があります。

 「所得補償保険」は、免責期間や保険金支払い期間の長さなどにより、比較的短期間(1〜2年)の就業不能状態に備える短期補償タイプと、長期間の就業不能に備える長期補償タイプに分けることがで きます。個人で加入される場合は、保険期間が1年〜2年が一般的です。保険金額は収入の50%〜70%以下で設定します。

 主な違いは下記の通りです。

  会社員の方は、公的保障では足りない部分を補完するために利用するといいでしょう。自営業の方は、働けなくなるとすぐに無収入になるリスクがありますので、民間の保険で備えることでリスクを軽減できます。 (渡辺一江)

  所得補償保険 就業不能保険
取扱保険会社 損害保険会社 生命保険会社
給付金
受取り理由
病気やケガで働けなくなった時
保険期間 1~5年間、なかには 60歳や65歳までもあり 60歳・65歳・70歳など
保険金額 月収の50%~70% 10万円~50万円
保険料 1年更新や5年更新ごとに 保険料が上がる 保険期間中の保険料は 変わらない
免責期間 7日~365日など ゼロ・60日など
編集後記

 超高齢社会の中で、将来は多くの人が100歳まで生きる時代が来ると言われています。毎年「敬老の日」にちなんで行われる総務省統計局の調査では、高齢者人口は過去最高の3617万人となり、総人口に占める割合は28.7%になりました。そのうち、85歳以上は約618万人、95歳以上は約60万人、そして100歳以上は約8万人です。
 2017年に設置された「人生100年時代構想会議」の報告によると、「2007年に日本で生まれた子供の半数が107歳より長く生きると推計される」という研究報告が紹介されています。
 一方、厚生労働省の令和元年度の介護保険事業報告によると、85歳以上の要介護認定者数は約345万人にのぼり、 歳を超えれば約半数以上の人が要介護認定を受けていることがわかります。 歳以上になると、その数字は %を超えます。
 私の父は101歳を迎え、現在要介護2ですが頭もはっきりしていて元気に暮らしています。医師からは国宝級だと言われます。でもやはり、100年生きるということは厳しい現実と向き合う日々でもあります。「人生100年は重い」と感じます。(加藤 惠子)