家族信託

今年7月に発表された日本人の平均寿命は、男性が80.79歳、女性が87.05歳で、いずれも過去最高を更新しました。男性は世界4位、女性は世界2位です。

一方、世界保健機関(WHO)が今年5月に発表した日本人の健康寿命は男女平均74.9歳です。こちらは世界1位で、世界平均が63.1歳ですからかなり優秀であると言えます。

しかし、世界寿命と健康寿命に差があるということは、亡くなるまでの約6年〜10年は自立した日常生活が送れないかもしれない、その可能性が高いことを示しています。

2015年に厚生労働省が発表した推計によれば、2012年で約462万人の認知症患者が2025年には700万人に達し、65歳以上の実に5人に1人が認知症という世の中になると言われています。そのような社会の中では、これからは相続対策よりも、もっと大変なことが起こってくることが予想されます。

例えば、もし父母が認知症になってしまうと、父母名義の銀行の定期預金も本人の意思確認ができなければ解約できませんし、保険金の受け取りも、不動産の売却も相続が発生するまでできなくなります。その解決策として、これまでは任意後見制度や法廷成年後見制度が利用されてきましたが、この場合、財産は家庭裁判所の管理下に置かれ、定期的な報告義務などが現実的には活用しづらい面もあり、実際にはあまり利用されていません。

そのような時に、信託という制度を利用する方法が今注目されています。

個人でも受託者に

今から10年前の2007年に信託法が84年ぶりに改正され、営利を目的とせず、特定の1人から1回だけであれば、個人でも、信託業の免許なしで受託者(財産を預かる者)になることができるようになりました。

つまり、不動産や預貯金など資産を持つ人が、老後の生活や介護に必要な資金の管理や財産の処分等を信頼のできる家族に託せるようになったのです。

財産を託すという仕組みは、以前から信託銀行の業務として行われてきましたが、個人の自宅などの不動産は信託財産として受託しないため、ニーズに応えられないケースが多くなっていました。又、この仕組みは家族に託すので、信託銀行の業務のように高額な報酬は発生しません。

報酬が発生する信託銀行の業務である「商事信託」に対し、「家族信託」と呼ばれています。

具体的には、資産を持つ親が、その保有する不動産や預貯金を信頼できる子供に託し、その管理・処分を任せる仕組みであり、財産管理の一手法です。信託契約後、名義は子供に移転しますが、贈与税はかかりません。